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玉鋼

鉧塊は部位によって品質がかなり異なり、良質な鋼だけでなく、やや不均質な鋼、銑、ノロ(鉄滓)、木炭などが混在している。
鉧はまず、大ドウ場で大割され、さらに小どう場で小割り、小造りの工程を経て、鋼と銑、歩鉧などに仕分けされる。
仕分け・鑑別は、鋼造り師が破面の色、輝き、粗密の程度、気泡の有無などを観察して行う。
破砕選別された鋼は造鋼(つくりはがね)と呼ばれたが、近年では玉鋼(たまはがね)と称せられ一般的になっている。
玉鋼は、その品質の内容によってなん通りかに分類され、つる、松、竹、梅、あるいは特級、一級~3級などの種別がある。
日刀保たたらにおける玉鋼の分類は次のようである。

玉鋼特級:炭素1.0~1.5%を含有し、破面が特に均質なもの
玉鋼1級:炭素1.0~1.5%を含有し、破面が均質なもの
玉鋼2級:炭素0.5~1.2%を含有し、破面が均質なもの
玉鋼3級:炭素0.2~1.0%を含有し、破面が粗野もの、別名大割下(おおわりした)ともいう
目白(めじろ):品質的には玉鋼1級品と同質であるが、大きさが約2cm以下の小粒なもの
銅下(どうした):品質的には玉鋼2級品と同質であるが、大きさが約2cm以下の小粒なもの
銑(ずく):炭素1.7%(あるいは2.1%)以上を含有し、溶解の進んだもの
歩鉧(ぶげら):鉄、鋼、銑、半還元鉄、鉄滓、木炭等が混在したもの。大鍛冶屋用ともいう。

 

玉鋼の代表的ミクロ組織を次に示します。

 

tama1-1
(観察倍率:100倍)
tama1-4
(観察倍率:400倍)

 

白い太い筋は初析炭化物(セメンタイト:Fe3C)、灰色または灰黒色の縞状組織はパーライト(フェライトとセメンタイトの混合相)、推定炭素量は1.3%

 

玉鋼1級品の組織

 

tama2-1
(観察倍率:100倍) 
tama2-4
(観察倍率:400倍)

 

灰色または黒灰色の縞状組織はパーライト(フェライトとセメンタイトの混合相)、推定炭素量は1.0%

 

玉鋼2級品の組織

 

tama3-1
(観察倍率:100倍) 
tama3-4
(観察倍率:400倍)

 

白色の帯はフェライト、灰色または黒灰色の組織はパーライト(フェライトとセメンタイトの混合相)推定炭素量は0.3%

 

玉鋼3級品の組織

 

玉鋼の化学組成分析値の例(wt%)(靖国たたら 昭和10年代のもの)
 

  C Si Mn P S Ni Cr V Cu Ti Al Sn
つる 1.42 Tr Tr 0.013 0.007 Nil Tr 0.02 Tr 0.004 0.006 0.004
1.17 0.02 0.02 0.032 0.008 Nil Tr 0.02 0.01 0.004 0.006 0.003