Loading...
大鍛冶

銑(ずく)押し法の産物である銑は、そのまま鋳物などの原料になる場合もありますが、銑の大部分および鉧押し法の製品である鉧塊を打ち砕いて鋼を選別した残り(銑、歩鉧など)は大鍛冶場で鍛錬(鍛造精錬)されて錬鉄(包丁鉄または割鉄などと呼ばれた)として諸道具の素材として使われました。
この精錬鍛冶工程(大鍛冶)は企業たたら経営では極めて重要であったとされます。大鍛冶と小鍛冶(野鍛冶、いわゆる村の鍛冶屋)はもとは同一の職人がやっていましたが、企業の発展とともに大鍛冶技術は次第に専業化して、企業たたらの一貫としての大鍛冶一本となりました。
大鍛冶の職場や道具は一口で言えば、小鍛冶のそれよりも一回り大きく、作業場は2ヶ所設けられていて、最初の工程を(さげば)といい、次の工程を本場(ほんば)といいます。
両者の場所の違いは、前者が若干大きくて、鞴(ふいご)先端の羽口の大きさとその角度が異なり、それによって羽口先端の炎の性質を違えています。
左下場では、ホドの羽口の先端で小炭と、銑の小塊を積み重ねて熱し脱炭(炭素量を減らす)します。出来た鉄は左下鉄(さげがね)といい、この左下鉄は完全には溶け合っていなく炭素量は約0.4~1.0%で、まだ、不均一で不純物も十分には除かれていないので、本場ではさらに、これを砕いて小塊にしたものと、歩鉧(ぶげら)などを割って小塊にしたものを配合して、ホドで加熱してさらに脱炭しながら炉底に吹き卸します。この状態の鉄を卸鉄(おろしがね)といい、赤熱のまま取り出して大工(大鍛冶場の技術主任)の指揮で手子(てご)という4人の作業職人が鎚打ち鍛錬して不純物を絞り出し、かつ脱炭も行います。そして、この加熱と鍛錬を重ねて、形を整えたものを割鉄または包丁鉄(錬鉄のことで炭素良は約0.1%)といい、諸道具の素材として出荷しました。

 

ookajikoutei

「たたら」における大鍛冶場の位置付け