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和鋼博物館のあゆみ

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館名の「和鋼」は、近代以前わが国で行われてきた砂鉄を原料に木炭を燃料として「たたら製鉄法」で生産された鋼のことです。この製鉄法の起源は、現在では、6世紀頃までさかのぼることが確認されており、中国山地でも古くから行われました。そして良質の砂鉄と豊富な森林資源に恵まれたことや種々の技術改良が大きな要因となり、近世の後半には、わが国の鉄生産量の80%以上を占めたとされます。
その頃、この鉄生産地帯の一角にある安来は、鉄の積出し港として栄えた歴史をもちますが、明治の中頃になると、近代製鉄法の普及によって次第に衰退せざるを得ない状況になります。これに危機を感じた地元のたたら経営者などにより、明治32(1899)年、安来港の近くに近代的商業機能を備えた雲伯鉄鋼合資会社が設立されました。その後、組織や名称を変え近代化を重ねて1世紀の間、その伝統と技術は一貫して引き継がれ、安来はハガネの町と呼ばれるようになりました。
和鋼博物館は安来港西岸の地に、平成5(1993)年4月に開館しましたが、それまでには約半世紀におよぶ長い前史があります。それは、昭和15(1940)年、皇紀2600年事業として、ハガネの町のルーツをたたら製鉄に求めて計画され、昭和21(1946)年に開館した日立製作所安来工場(現 日立金属)付属の展示施設「和鋼記念館」です。この事業は、たたら研究の先駆者俵国一博士の指導のもと、旧たたら経営者にも協力を求めて、資料を収集・公開し、たたら製鉄に関心をもつ多くの人々の研究メッカとしての使命をはたしてきました。
その後、昭和62(1987)年に、たたら製鉄に関する文化遺産を共有する安来市を含む6市町村は、現総務省の指定を受けて、「鉄の道文化圏」の形成に取組み、安来市では、和鋼記念館の重要有形民俗文化財250点を含む収蔵資料約15,000点の移管をうけ、新たな構想のもと博物館の建設に着手し、日本の伝統的製鉄法「たたら」に関するわが国唯一の総合博物館として開館しました。
館内は、種々の和鋼の製鉄用具の展示や映像、体験コーナーをとおして、たたら製鉄とその歴史・流通、さらに各種匠技を広く紹介するとともに、年2回の企画展や講演会、様々なイベントを開催しています。また、和鋼・たたらの調査・研究に関する和鋼記念館の業績を引継ぎ、発展させることを目指しています。